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レポート 弁護士 島 昭宏

ここ数年、すっかり定着したジェンダーやLGBTQの議論。とはいえ、このテーマはどうしても感情的な対立に繋がったり、なかなか冷静な話合いが難しかったりするように思います。今回、敢えてこのテーマを取り上げたいという弊所の寺田伸子弁護士からの申し出があり、『私たちの「戦う姫、働く少女」』といった著作があるジェンダー・セクシュアリティ社会学者の中村香住さんをゲストに迎えて開催されました。というわけで、今回は寺田弁護士による進行です。

中村さんは、大妻女子大学や慶応大学でオタク文化を含むメディア論やジェンダー論を教えているそうで、ご本人自身、オタクであり、レズビアンであることも公表している研究者です。
まずは、現在のジェンダーの議論に至る歴史的経緯から。第1波フェミニズムが、女性参政権を中心とする法的男女平等を求める運動から始まり、第2波は、いわゆるウーマン・リブとか中ピ連(ピル解禁を要求するグループ)といった言葉から思い出される女性の権利を獲得しようとする時代の運動。その後、「フェミニズムなんてもう古いよね」「フェミニズムの目的は達成されたからもういらない」というようなポスト・フェミニズムといわれる時代に至り、英国サッチャーや小泉首相などの新自由主義の時代とも重なって、女性たちが新たな困難に直面するようになって生まれたのが第3波フェミニズムとのことです。
オタクを自称する中村さんは、メイドカフェが好きで、かつて2年間で約500回も通ったといいます。そして、「メイドカフェと労働」を博士課程のテーマに選んだとのことで、そういった現場に根差した取材(フィールドワーク)や実生活が研究者としての説得力に厚みをもたらしているのでしょう。例えば、メイドカフェで働く女性たちは、勤務時間外にも仕事用のSNSアカウントを通じて私生活(らしきもの)を晒す等して店にお客さんを呼び込む活動が不可欠で、そういったSNS労働(アイデンティティ労働ともいうらしい)は無償であることが少なくないなどの問題を指摘しつつ、他方、彼女たちは自分たちが‘かわいらしさ’を求められる職業に就いていることに居心地の良さを感じているという現実。そういった矛盾や悩みのようなものを直視することが、現在のジェンダー論には必要なんだろうと感じました。
話題は、LGBTQといった性的マイノリティーへと展開。そうなると、SOGI(Sexual Orientation-性的指向-& Gender Identity-性自認-)、Cisgender(性自認と生まれ持った性別が一致している人)、Transgender(一致しない人)、さらには、クワロマンティック(自分が他者にいだく好意が恋愛感情か友情か判断できない/しない)など聞き慣れない言葉の連発で、まさに大学の講義の様相となります。
さらには、ディズニーのジェンダーに対する配慮がどのように変わってきたかなど、メディアとジェンダーに関する話題が続きます。ディズニー好きにとっては、めちゃくちゃ興味深い分析なのではないでしょうか。
はっきり言って、想像以上に面白い。しかし、このままでは、「新しい時代へのジェンダー・スタディの役割」というテーマに到達しない。そんなことを思っているうちに第1部が終了しました。

第2部では、会場からも様々な質問や意見が出され、期待通り盛り上がりつつも、このテーマの難しさを感じさせられる時間でもありました。
例えば、第3波フェミニズムの目的としては、様々な環境にいる、様々な考え方の女性の連帯を模索することという話がありました。具体的には、職場などで女性の容姿をカジュアルに褒めるという行為がなされた場合に「気持ち悪い」と感じた時、その不快感を個人で抱え込むのではなく、SNS等を通して他の女性と共有することで払拭される場合があると。趣旨はよく理解はできる。その場面を想像することも難しくはありません。しかし、そういった空気が広がることで、「今日の服、とても似合ってるね」などということが憚られることになり、結果的に殺伐とした社会にならないだろうか・・・などと思っても、その場で発言することも簡単ではありません。皆さんは、どう思われますか?
寺田弁護士からは、ジェンダー問題を扱った何冊かの本を読んだり、ドラマを観たりしたとのことで、中村さんが「ジェンダー・セクシュアリティ考証」を務めた『作りたい女と食べたい女』のほか、アロマンティック(クワロマンティックと似ているけど、恋愛感情がないと感じている人たち)の女性が登場する『今夜すきやきだよ』や『恋せぬふたり』といったドラマ(うち前二者は漫画が原作とのこと)が話題に挙がっていました。

こうしてみると、誤解を恐れずにいえば、狭義の男女平等みたいな課題はフェミニズム第1波、第2波で概ね認識の共有は果たされており、あとは現実の賃金や役職、議席数等の格差を是正するための具体的な方法や政策の模索、そして時間が必要ということではないでしょうか。
その上で、現在の課題は、単純なセックスとしての男性、女性ではなく、もっと複雑かつ現実的なジェンダーの問題のひとつとして、セクシャル・マイノリティーといわれる人たちの存在を知り、人格を認め、そして平等を獲得するということです。そういう人たちが近代以降、突然変異で生まれたとは考えられません。そう考えると、彼らはどれほど長い間、その存在さえ認められず(主張することもできず)、深く傷つき、苦しんできたことでしょう。そして、上記のように、今では漫画やドラマでは日常的に取り上げられるようになり、ディズニーまでが強い配慮を示さなければならないほど社会通念が変化しているにもかかわらず、いまだに心無い言葉を投げかける政治家が後を絶たない現実が続いているのです。
セクシャル・マイノリティーへの差別は、あらゆる意味で合理的理由など見い出すことはできず、許されないはずです。しかし、そこには性自認等、内面の問題が深く関わっているために、シンプルには解決できない課題が多く存在することも想像に難くありません。だからこそ、この問題について語り、議論することは、新しい時代への重要なテーマであるように感じました。

追記 たまたま昨夜、アマゾンプライムで観た『さよならくちびる』は、そんな苦しみを抱える女性が主人公の一人として登場する青春映画で、なかなか面白い作品でした。