2024/03/04
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レポート 弁護士 吉田理人
サロンハウリン第23回は、フリージャーナリストの志葉玲さんのお話を聞きました。
志葉さんは、これまでウクライナやガザ地区、イラクなど各地の紛争地を取材し、報道番組への映像提供や、インターネット、雑誌などに記事を掲載しているジャーナリストです。ウクライナ紛争やイスラエルのガザへの侵攻などが大きな国際問題となり、日本でも毎日報道されている今まさにホットなゲストです。
第1部では、志葉さんが、ジャーナリストを目指すきっかけから話を聞いていきます。
ジャーナリストを目指すきっかけは、大学生時代にミャンマーから来た女子学生と出会ったことだったと振り返ります。
志葉さんが彼女と話をしてみると、自分の育った村で虐殺があったことや、いとこが殺されたといった話がでてきて、志葉さん自身が育ってきた環境とあまりにも違うことに驚き、もっといろいろなことを知らなければいけないと考えるようになったとのこと。
大学卒業後に、テレビ番組制作会社に入社し、3年ほど勤務したのち、フリージャーナリストになるために退社。
退社後、ジャーナリストとなるための武者修行として、約1年世界放浪の旅に出ます。放浪の旅でいきなりイスラエル、パレスチナ、コソボなどの紛争地を巡り、伝手のない場所で現地の人と人間関係を築き、取材を行うという訓練をしたとのことです。
帰国後、フリージャーナリストを名乗り、記事を書くようになります。
2003年3月、イラク戦争開戦の時に、ジャーナリストであれば、反戦デモを取り上げるだけでなく、実際に現地に行かなければならないと考え、開戦2日後のバグダッドに入って、取材活動を開始したとのことです。
当時、20代で紛争地を取材する日本人ジャーナリストは珍しく、ジャーナリストとして注目してもらえるようになり、以降も精力的に紛争地の取材を続けています。
パレスチナにはこれまで10回は行って取材を行ってきたとのこと。ガザ地区で、パレスチナ人の家にホームステイをして、日本のホラー映画の話題で盛り上がったことや、イスラム教などの一神教と日本の多神教の違いについて住民の本心を聞くこともできたといったエピソードを語ります。
私たちは、なかなか現地の住民の声を直接聞く機会はなく、普段の生活の様子や雰囲気もわからないので、実際に現地での志葉さんの体験談はとても興味深いです。
テレビ番組の制作会社に勤めていたこともあり、話題は日本のテレビ番組に移ります。
志葉さんは、インターネットが普及してきたが、ネット上のトレンドは、テレビのトレンドを強く反映しており、まだまだテレビが主でネットが従という関係は変わっていないと言います。そして、テレビというメディアは「間」を嫌うので、即座に断定的なことを言ってくれる人が重宝される。そのため、日本では、芸人やタレントがコメンテーターとしてテレビに出演していることが非常に多い。欧米メディアではきちんと取材活動をしてきたジャーナリストがコメントを言うことが多いが、専門家でもない芸人やタレントが断定的な発言をする日本のテレビは危ういと指摘していました。
志葉さんがこれまでニュースとしてとりあげてきた問題は、ウクライナやパレスチナ等の国際紛争に限らず、日本国内の入管問題、気候変動問題、再エネ問題など多岐に及んでいます。
志葉さんは取材対象を決めるにあたって、あえてマスメディアで取り上げられないようなテーマを扱い、多くの人に見てもらうことを考えているとのことでした。そして、記事にする際には、読者が、自分の視点を追体験できるよう、記事を書くことを心掛けているといいます。
確度の高い記事を書くために、きちんと勉強し、取材をしているので、ぜひ記事を読んでほしいという志葉さんの言葉で第1部は締めくくられました。
第2部では、志葉さんのお酒も進み、どんどんヒートアップ。日本のマスメディアに対する不満などを大きな声で叫びます。
社会的に信頼されていて実績のある人でも、自分の専門外のことでは、めちゃくちゃなことを言っていたりするため、きちんと信用できる情報を見極めていくことが重要と訴えます。
紛争地の状況や入管の問題など、大手マスメディアでなかなか取り上げられない問題を真剣に扱ってきたからこそ、現在のマスメディアの状況に強い憤りを感じていることが、大きな声とともに伝わります。
今回のサロンハウリンは、紛争地での志葉さんと現地の人との会話の内容など、テレビのニュース報道だけでは伝わらない現地の雰囲気を感じられるとてもよい機会となりました。
2022年に出版された志葉さんの著書『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』では、ウクライナ、パレスチナの問題、日本国内の入管問題など、志葉さんがこれまでの取材を通して見てきたことがわかりやすくまとめられています。
私たちが行くことのない紛争地で現地の人々と直接触れ合っているからこそ、感じられること、考えることを追体験できる貴重な本です。おすすめですよ。