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サロン・ハウリン第11回レポート

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https://www.youtube.com/watch?v=33EAOkb0158


弁護士 吉田理人

サロン・ハウリン第11回。「新しい時代への動物福祉の役割」をテーマに、アニマルライツセンター代表理事の岡田千尋さんをゲストに迎えました。聞き手の島弁護士は、東京弁護士会の公害環境委員会で動物部会を立ち上げ、JELF(日本環境法律家連盟)でも、昨年末に動物PTをスタートさせるなど、動物の問題に精通していることから、これまで以上に深い議論が期待されます。

アニマルライツセンターは、前代表の川口進氏によって1987年に設立され、岡田さんは2003年から2代目の代表として活動しています。

アニマルライツ(動物の権利)という言葉から、先鋭的な団体との印象を受けることもありますが、実際は動物たちの苦痛を効果的に減らすことを目的とした活動を行っており、岡田さん曰く、タカ派というよりはハト派と認識しているとのことでした。

アニマルライツセンターでは、初期の頃は、相談を受け、それに対応するという受動的な活動が中心でしたが、相談ベースだと、困ったことが起こった時に対応するだけで、根本的な問題を解決することができないということで、2001年ごろから、社会システムを変えるための提案を行うという能動的な活動スタイルに転換。現在は、畜産動物のアニマルウェルフェア(動物福祉)向上のための企業への働きかけの活動に力を入れているとのことでした。
財政的には、会員数が約400名で、活動資金の半分を会費・寄付で賄い、残りの半分を、海外のファンドからの助成金等で賄っていると話されていました。

岡田さん自身はヴィーガンとのことですが、アニマルライツセンターは、食肉をやめさせる活動をしているわけではなく、畜産動物をゲージから出す、屠殺方法を改善するための活動をおこなっていて、特に食肉の流通・卸、販売業者向けの活動に力をいれている。今の日本の畜産動物は、そのほとんどが最底辺の環境で飼育されており、アニマルウェルフェアの向上という点でいえば、その最底辺をなくすことが重要だと考えているとのこと。

話は最近ニュースでもよく聞く、鳥インフルエンザの話題に。今年度は既に鳥インフルのため、1000万羽を超える鶏が殺処分されています。農水省は、鳥インフルを予防するために、ウィンドレス鶏舎を推奨し、助成金も出していましたが、ウィンドレス鶏舎による鳥インフルの予防効果については明らかではなく、むしろ鳥インフル被害の確率が上がるのではないかと岡田さんは話します。ウィンドレス鶏舎で育った鶏の健康状態は決して良くない。締め切った自然光のない環境での飼育は、鶏の健康状態に悪影響を及ぼし、免疫力を低下させているのではないかとの岡田さんの指摘は、確かに説得力があります。

岡田さんは、アニマルウェルフェアの向上を図る意義について、動物の利益だけではなく、ウィルスのパンデミックを防ぐ、環境問題の改善、平和な社会の構築など、人間社会全体の利益につながると訴えます。
 動物の問題は、畜産動物に限らず、家庭動物や動物園、野生動物、外来種など広範囲に渡ります。島弁護士は数年前から、人と動物の共生する社会の実現が人にとっても利益であるとして「動物共生権」を提唱しており、そのためにも、各分野の動物との「共生」が何を意味するかを絶えず議論していくことが重要との持論を展開します。それらの点についても、岡田さんの考えを聞き、第1部は終了しました。

第2部では、動物の利益を守るための法理論という難しい話題に。動物が虐待されたとき、劣悪な環境に置かれたとき、誰が、どのように法的手段をとることができるのかというのは、非常に難しい問題であり、今後解決すべき課題のひとつです。議論をしながら、今後も問題意識を共有して、議論を深めていくことが必要だと感じました。

日本には、現在、アニマルウェルフェアに関する法律はありませんが、この後は規制法ではなくとも、推進法という形でも法律を作ることが重要だと話します。
行政とアニマルウェルフェアに関する話をしても、行政は積極的に動こうとしないので、どうしても悲観的になる。でも、企業は、既に変わり始めていて、そこに希望があるという岡田さんの言葉が印象的でした。機関投資家も企業に対して積極的に発言するようになっていて、投資家の関心がエシカル消費やアニマルウェルフェアといった方向に向くことによって、企業も大きな関心を寄せるようになっている。日本の場合、行政が動く前に、企業が動く。そこから社会が変わっていくだろうという言葉は、現場にいる岡田さんの実感がこもっていて、今後の社会の変化に少し希望が持てました。

動物は身近な存在であり、愛玩動物となったり、食品となったり、駆除の対象となったり、実験に利用されたり、様々な場面で人間と深い関わりを持っています。しかし、動物の問題に関心を持とうとしなければ、人間のために苦痛とともに動物たちが殺される場面を想像することもなく、大量に消費されていくという現実は変わりません。
岡田さんが代表を務めるアニマルライツセンターの活動は、社会的に無視されがちな動物たちの苦痛に焦点をあて、動物の視点から、人間社会の改善を求めるものだと感じました。
保護犬や保護猫の引き取りが社会的に関心を集めたり、エシカル消費という言葉やアニマルウェルフェアという言葉が社会的に認知されつつあるなど、社会的にも動物に対する見方が急速に変化しつつあります。人間と動物がよりよい関係を築くためにも、いま一度、動物の視点に立って考えることが必要なのだと感じました。