コラム一覧

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2017/11/16
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2016/02/09
購買運動
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原発メーカー訴訟
サロン・ハウリン第10回レポート

2022/12/19

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URL:https://www.youtube.com/watch?v=icYZnuh_624

弁護士 菅野典浩

サロン・ハウリン第10回は、一般社団法人オーガニックフォーラムジャパン会長で、日本の有機農業の草分けである徳江倫明(みちあき)さんをゲストにお迎えしました。
第一部では、徳江さんがこれまで歩んでこられた有機農業の取り組みや人となりなどについて伺いました。
徳江さんは熊本水俣市に生まれ、父親がチッソの技術者で水俣病の問題にかかわっていたことや、全国各地で公害病が問題となった時代背景もあり、「企業の論理」に対する不信感や公害問題への関心を抱くようになりました。
早稲田大学の学生時代に沖縄で(砂糖)キビ狩りを経験して農業に関心を持ち、青果物の販売に係わりたいとの思いから株式会社ダイエーに入社しましたが、1978年、山梨県韮崎市に仲間とともに農場を設立して豚の完全放牧に挑戦する一方で、学生運動家の藤本敏夫さんが主宰する「大地を守る会」に参画し、週の半分は山梨の農場での開墾作業をし、残りの半分は「大地を守る会」で仕入れや有機野菜の販売にかかわるようになりました。
その後、徳江さんは「大地を守る会」の共同購入方式による事業の限界を感じ、1988年、宅配で同会が作る有機野菜を販売する「らでぃっしゅぼーや」を設立しました。
 そこで徳江さんは、「農薬を使わない・使った場合は報告する」、「うそをつかない」、「人の悪口は言わない」などを経営の5原則に掲げ、情報の公開にも積極的に取り組まれました。
特に、宅配する野菜のメニュー表に生産者名のほかに住所を記載し、消費者自らが生産者を確かめに行けるようにしたというお話の中で、隠すことなく現場が見られればきちんとした野菜を作っていることが分かり信頼につながるという指摘は、都合の情報を隠そうとする企業などが多い現代で、情報開示のあり方を考えさせられる示唆でした。
また、徳江さんは、有機JAS認証機関「アファス認証センター」の設立にも尽力されました。しかし、「らでぃっしゅぼーや」のように、生産者と消費者が直接取引する形で信頼を築いた関係であれば、第三者機関によるチェックよりも利害関係を持つ者同士がチェックする第二者認証の方が信用されるというお話は、信頼を得るために第三者機関を用いる現代の流れに対するアンチテーゼともいえ、興味深いものでした。

第1部は、島弁護士による徳江さんの経歴に関するインタビューで終わってしまったため、第2部ではこれからの農業、有機農業の未来などについてもお話を伺いました。
といいつつ、日本初のオーガニックスーパー「マザーズ」の設立秘話や藤本さんの願いを引き継いで有機農業の認証機関を設立したお話しなど、徳江さんの歩みについてまだまだ続きました。
 その後、日本では、1971年に有機農業研究会が設立されて「有機農業」という言葉が生まれましたが、島弁護士から、徳江さんに、有機農業が全耕地面積の0.5%しか行われていない日本の農業の現状について質問がありました。
徳江さんは、海外では1997年頃から方向転換して行政が有機農業にかかわる形で推進し、遅ればせながら、昨年、農水省が「みどりの食料システム戦略」を掲げ、耕地面積の25%、100万ヘクタールを有機農地にする方針を打ち出し法制化を進めたことで、流れが大きく変わり、助成金がでるようになったり、有機農業を推進する市町村が「オーガニックビレッジ」宣言をするなど、これからの農業の成長分野は「有機農業」になったと自信をもって答えていました。
また、国はエネルギー問題では再エネを増やすというポーズを見せつつ本音は原発を増やす方向に動こうとしており、農業でも同じではないのか?という島弁護士の懐疑的な意見に対し、徳江さんは、行政に頼っていてはだめで、市民が動くことで既成事実を作り、また声を出すことが重要であると、これまでの経験を踏まえた行政の動かし方を熱弁されました。
さらに、徳江さんは、山梨での農場設立や経営者としての経験を踏まえ、これまでの日本の農業政策の問題点は、「農家」のための農業政策を掲げて「農業」は「農家」のものとばかりに規制し、新規参入を制限した結果、農家はJAの下請けのようになって経営感覚が生まれずに衰退していったと分析し、日本の自給力を上げるためにも、使われない農地を国が召し上げて希望する国民に分けるなど、兼業農家でも家庭菜園でも何でもよいので誰でも農業ができる体制を作ることが重要であると提言されています。
そして、農業の魅力に触れる工夫例として、徳江さんが日本で最初に導入した市民農園(クラインガルテン)の話につながり、農業従事者が足りないのは問題ではあるが、「足りないものは足りない」ので悲観するのではなく、民間では農業に魅力を加え、また、国も国主導で全て決める今の形ではなく、新しいアイデアやビジネスの芽に助成していくというように、事業者の自由度を高める工夫をしないと魅力は生まれないと語っていました。
 最後に、徳江さんは、有機農業でいえば、行政、政治と対等に議論ができるようにして農家の声を政策に反映させる流れを作ることが大事であり、給食に有機野菜を使うようになったり、先日の「オーガニックビレッジ全国集会」では、1200人もの自治体の職員らが集まったように、「何かが変わってきている」という実感があるとして、日本の農業にポジティブな光を見出していました。
徳江さんは、今でもクラブハウスやツイッターなどで、若い生産者などの集まりに参加して議論を聞いているそうで、いつまでも好奇心旺盛で、現場の声を大事にする姿勢が伺われました。
サロンの対談の中で、ポジティブな島弁護士が、ぽつりと、徳江さんの前だと自分がポジディブな人間だと思えないと言うほど、有機農業を広げるために闘ってきた強い精神と経営者として物事を見極める感覚、時代を読む嗅覚を併せ持ち、しかも有機野菜を通じて「人」を育てる徳江さんは、「ミスターポジティブ」とも呼ぶべき、太陽のような方でした。