2022/12/08
環境法律事務所であるアーライツでは、2016年から年に1回、事務局を含め、現地視察を兼ねた2泊3日の事務所旅行を実施しています。これまで、沖縄(辺野古、泡瀬干潟)、長崎(諫早、石木ダム予定地)、熊本(荒瀬ダム撤去跡)、奄美大島(ノネコ)へ行きましたが、いずれの地域でもJELF(環境法律家連盟)会員弁護士が何らかの形で関わってきました。そんなネットワークがあるため、現地関係者の方々に運動の説明や現場を案内してもらうなど、通常の旅行では不可能な得難い体験をすることができるのです。一昨年は希望者だけで種子島(馬毛島基地化問題)へは行ったものの、コロナ禍のため事務所旅行としては3年ぶりとなった今回、2022年10月19~21日に弁護士3名、事務局3名の計6名で、六ケ所村視察を中心とした青森県への旅行を実施しました。
六ケ所村の問題は多少の前提知識が必要となるため、事前にある程度のネット記事の共有と鎌仲ひとみ監督のドキュメンタリー映画『六ケ所村ラプソディー』のDVDを購入し、みんなで回し見して準備をしました。核燃料サイクルがどういうもので、どんな課題があるのか、そして六ケ所村がどれほど翻弄された歴史を持つのかというぐらいの知識がなければ充実した視察とはなりません。
10月21日(金)夕方の新幹線はやぶさで八戸へ。繁華街がなかなかの賑わいで、候補になっていたお店が満席で入れなかったため、ぶらぶらしながら適当な居酒屋に入りましたが、これが当たりでした。普段から飲み歩いてる強者揃いなだけあって、こういうところは強い。八戸の美味いもんをバッチリ堪能。〆のラーメンも八戸の文化のようで、抵抗することなく郷に従いました。
翌22日は、朝9時半に浅石法律事務所へ。浅石紘爾(こうじ)弁護士は、六ケ所村再処理工場の稼働差止め等の訴訟弁護団の代表として約30年間闘い続けているというのですから、筋金入りどころではありません。さらに、その内容が凄まじい。弁護団メンバーには、青森の弁護士が他にはおらず、関東の弁護士3人と共にわずか4人の実働でやっているとのことです。六ケ所村の施設は沖縄電力を除く9電力会社が出資する日本原燃が運営しており、同じ地域の弁護士は利害関係が重なるケースが多いというのも理由の一つかもしれません。さらには、再処理工場という極めて特殊な施設の内容に関わるものであることから、他の原発の差止訴訟で展開される技術的知見とは必ずしも重ならないということもあるでしょう。
それにしても六ケ所村の闘いは孤独でし烈です。浅石法律事務所の1階は通常の法律事務所、2階は六ケ所村裁判のためのスペースになっています。もちろん、会議室はありますが、とにかく膨大な資料の保管だけでもとてつもなく大変です。浅石弁護士には、1時間ほど、これまでの闘いの歴史や今後の展望等を、終始穏やかな表情でお話しいただきましたが、これほど人生を賭けて原発と闘い続けてきた弁護士がどれほどいるだろうかと思うと、背筋は伸びっぱなしでした。
その後は、原告団事務局長の小笠原さんに案内してもらって八戸から車で1時間ほどの六ケ所村まで行き、何か所かで車を止めて外から施設を見学しました。ちょっと敷地の中に入って写真を撮っていると、警備員が物凄い勢いで走ってきて「そこはダメです!外に出てください」と怒られたりしつつ、続いて六ケ所原燃PRセンターへ行きました。
ここはその名の通りPRのための施設ですが、とにかく核燃料サイクルや再処理について、様々なミニチュアや設備と共に、非常に分かりやすく詳細な説明がされていて、なかなか勉強になります。ここで半日ぐらいゆっくり過ごして知識を整理するのも有意義だろうと感じました。
原発推進派は、福島の事故などなかったかのように原発の「40年ルール」を撤廃し、新設増設へ突っ走ろうとしています。しかし、もんじゅが廃炉に決まったことからも明らかなように、高速増殖炉、それに核燃料サイクル自体が実現不可能な夢に過ぎないことは、すでにはっきりしているのです。したがって、六ケ所村に集められた核廃棄物は行き場がなくなり、このままではなし崩し的に最終処分場にされるという懸念は、極めて現実的なものです。これほど無責任で、いい加減な国家があっていいんだろうか?いつまで青森の人たちを苦しめれば気が済むのか?再処理工場は、稼働してなくても、維持するだけで1日3~5億円の維持費用がかかっているとのことです。いつまでこんなバカげたことを許さなければならないんでしょう。
分かってはいたものの、荒涼とした大地を車で走りながら、苦しくて仕方がありませんでした。
午後は、十和田市の北里大学に向かいました。獣医学部の学生さんに実習動物についてレクチャーをしてもらうためです。
夕方、大学に着くと、彼女は、自分が譲り受けた犬を連れて、大学の中を案内してくれました。マル秘事項が多いため、ここにはほとんど書くことはできないけど、かつては酷かった動物の扱いも、学生たちの努力によって確実に改善されてきていることがよく分かりました。まだまだ課題はあるとはいえ、問題意識を持つ学生たちの働きかけによって大学が変わっていくっていうのは素晴らしいことで、日本の大学もある意味、民主化が進んでいるといっていいのかもしれません。
その夜は、十和田市内の居酒屋を堪能して、翌日は朝から紅葉真っ盛りの奥入瀬へ。心配だった渋滞もそれほどではなく順調だったため、十和田湖へ向かう選択肢もありましたが、敢えて十和田名物バラ焼きを食べるために市内に戻りました。美味かった!
帰りの新幹線では、もちろん、各自大量の仕入れをして打ち上げ。やはり同じ志を持った仲間と目的のある旅をするというのは最高ですね。来年はどこに行こうかな。
(弁護士 島 昭宏)