2023/05/31
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レポート 弁護士 寺田伸子
サロン・ハウリン第15回のゲストは佐分利応貴(さぶり・まさたか)さん。初めて直球で(?)、問題山積の日本経済に斬りこむ企画。佐分利さんは、実は島弁護士の高校の後輩で、京都大学経済学部を卒業後、当時の通産省に入り、現在は経済産業省大臣官房参事のほか、独立行政法人経済産業研究所、国際・広報ディレクター、研究コーディネーター(政策史担当)、上席研究員と、幅広く活動されています。
佐分利さんは、入省直後、湾岸戦争をきっかけに石油不足が懸念された時期に、資源エネルギー庁の石油関係の部署に配属になります。印象に残っているのは上司がメディアに「オイルタンクの絵を流せ」と要請していたこと。「タンクにオイルはある、安心してください」とメッセージを伝えてパニックを防ぐ、官僚のワザといったところでしょうか。当時、そして長い間、米国にとって日本はライバル、または対ソのパートナーでしたが、時代は変遷。島弁護士が「昔の日本は経済は一流だったのに、気づいたらボロボロ。それを整理していない。政治が議論せず、方針も示さないことが問題ではないか」と指摘すると、佐分利さんは「現状はむしろ官邸主義。役所のリーダーシップは難しくなった」と。高速道路を作ろう!などと単純な処方も効かず、志の熱はぬるくなり、「言われたことだけやっていればいい」官僚が増えた、とも。
佐分利さんは、安倍政権のいわゆる3本の矢によって株価は2倍に、失業率も下がった、「でも、世界のスピードよりは遅かった」と振り返ります。さらに、今の日本経済については、「悪い。よく回っていると不思議なほど。他国が4つのエンジンで飛んでいるのに、日本は1つしかエンジンがない」とバッサリ。使えていないエンジンとは、女性、高齢者、若者。いや~、ほんとそうですよね~。
とはいえ、ポジティブに考えると、この3つのエンジンを全開にしたならば、日本経済は「めちゃくちゃ変わる」。佐分利さんは、なんと「これから日本の時代が来る」とも言ってくれています。デジタル化のおかげで、緻密なデータが取れて、がんばった人が報われるのだと。また、日本の優れた品質が、情報技術革新により「勝手にボーダーレス化」して、世界の扉が開くのだとも。素晴らしい商品をECサイトで売ったら、海外から注文が来る、というようなことですね。島弁護士からは「目に見えない価値をどうやって計るか。他国に負けても、GDP上げなくても、幸せになれる、というグランドデザインが必要」と、別の視点からの展開もありました。
配信終了後の第二部では、原発の問題などにも触れつつ、若い世代から「ファッションの仕事で社会貢献したいが、出る杭は打たれる、という経験を重ねてきた。これが日本の成長を妨げているのでは?」との質問に、佐分利さんは「いま『教』はあるが、『育』がない。育てるためには見ることが大事。形を整えて、個別にちゃんと見ていない」と分析。「他のエンジンを動かすために具体的にはどうするか?」との質問(←ワタクシから)には、「難しい問題だけど、ムチでなく、アメが効く。ダイバーシティに配慮すると実際に株価が上がるとか、採用に若者の応募が増える、というのが効果的」と、答えてくれました。どのエンジンも「1個の成功事例を作る」ことで、ドラスティックに出力を上げる可能性があるとのこと。今回は、希望の光がほんのり見えるセッション。官僚にも精力的に仕事してもらいつつ、自分なりにその「1個」を獲得すべく、奮闘しようと思います。