サロン・ハウリン第2回レポート

2022/04/18

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URL:https://youtu.be/Sa-xOvpI0JY



レポート 弁護士 寺田伸子


サロン・ハウリン第2回のゲストは、ジャーナリストの青木美希さん。北海道新聞の記者として北海道警裏金問題に取り組み、約1年間の報道は、警察に約9億6千万円を国と道に返還させるに至りました。取材班は菊池寛賞などを受賞し、また青木さんは活躍が評価されて、朝日新聞に入社されます。同紙では原発事故検証企画「プロメテウスの罠」に参加、また「手抜き除染」問題を張り込みでスクープするなどし、両取材班が新聞協会賞を受賞しています。現在は、同新聞社に在籍しながら、ジャーナリストとして活動中で、ご著書に『地図から消される街』(講談社現代新書。貧困ジャーナリズム大賞、日本医学ジャーナリスト協会賞特別賞などを受賞)、『いないことにされる私たち』(朝日新聞出版)があります。

第1部の島弁護士とのトークでは、まず、北海道警裏金問題がどのような問題だったのか、新聞と警察との生々しい攻防などをお話しいただいています。取材中、居酒屋で日本酒をドンと置かれて、「オレに酒で勝ったら話してやる」と挑まれたこと(結末はアーカイブで!)、警察担当記者としてデカ部屋に詰めていた際に、青木さんはよく空腹でお腹が鳴ってしまい、「お前もたいへんだけど、俺たちもたいへんなんだ」とデカさんから同情されたこと(これが重大な事実と後に判明!)など、ぐいぐい引き込まれるエピソードが満載。

青木さんの重要な活動領域である原発問題についても、たっぷり聞かせていただいています。最近のご著書『いないことにされる私たち』にも書かれているように、避難者に対する時期尚早な住宅打切りや医療費の打切り、そして避難者数のカウントの実態との乖離は深刻な問題です。強引に形ばかりの「復興」を急ぐ国や自治体からの、いわば二次被害に痛めつけられる避難者…、特に、実際には声を上げられない、心を蝕まれた方々の悲痛な叫びを、青木さんは丹念に聴き続けています。

話題は、新聞の役割についても及びました。青木さんは、「助けてほしいという人々の声を受け取り、行政と橋を渡して、改善を図っていく、そして平和を守ることがペンの役割だと思う。皆さんとつながることが、踏ん張る力になる」と話してくださいました。誰もが動画や写真を撮影し、投稿する昨今、新聞は独自のルートや手段で事実を確認し、関係する行政にもカウンターコメントを求め、「裏をとる」。その繰り返しが信頼につながり、実名で話をしてくれる人が出てきやすくなるとのことです。

配信終了後の第2部では、このような新聞や記者の活動について、もう少し詳しくお話を聴いています。デジタルの時代とはいえ、本当に困っている人々は、SNSもできないし、ガラケーしか持っていないこともある。青木さんは、「ニュースで見たあの人はその後どうなったのか?」と足跡を追いかけることもあるそうです。そして、対面して取材するときには、「相手に、何らかの犯罪を告白させなければならない場面もあります。そんなときは、守秘義務があるということは信頼の基礎。でも相手は、本当に守秘義務を守るかどうか、疑っても無理はない。そんなときは、自分がどういう人間かを説明して、見てもらうしかない」。冒頭の、道警裏金問題の取材エピソードでもわかるとおり、充実した取材の源は、結局、人間としての生き方や胆力、根気ということなんですね。
第2部以降はワインも注がれて、直近の新聞社の不祥事についてなど、配信終了後ならではの、率直かつオモシロイ質疑応答が続きました…。

青木さんは、コロコロとよく通る明るい声で(合唱部出身だそう!)、たくさんお話ししてくださいました。苛酷な現実を見聞きしたり、胡散臭い気配を感じても、あの青木さんがいる!と思うことがどれだけ心強いか。皆さんも同じだと思いますが、特に弁護士としては、青木さんの繋ぐチェーンの強く切れない輪でありたいと、背筋が伸びました。「必死に抵抗しないと、いとも簡単にやられてしまうからね」と、青木さんは締めくくるのでした。