コラム一覧

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豊島・直島 視察
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~原発メー カー訴訟 最高裁へ~『脱原発東電株主運動ニュース』に掲載されました
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長崎 視察旅行②
2017/11/16
長崎 視察旅行①
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原発メーカー訴訟・控訴審に向けて
2017/03/24
北海道新聞2017年3月18日
2017/03/15
北海道新聞 2017年3月5日
2017/03/03
原子炉の欠陥
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風力発電の促進に向けて
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「みどりの遺言」プロジェクトはじまる
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長野県大町市訪問
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事務所研修 沖縄へ!
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原発メーカー訴訟
サロン・ハウリン第21回レポート

2023/12/14

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レポート 弁護士 菅野典浩

 サロンハウリン第21回のゲストは、グリーンピープルズパワー株式会社(以下「GPP」といいます。)の代表取締役・竹村英明さんです。
竹村さんは福島瑞穂議員の秘書として活動した後、飯田市で再生可能エネルギーの市民への普及に取り組む「おひさま進歩エネルギー有限会社(現在は株式会社)」の立ち上げにかかわり、2016年の電力自由化に伴い、2017年にGPPを設立しました。
GPPは市民の出資で運営し、再生可能エネルギー100%の電力供給を目指しており、現在、GPPが契約して買い取っている発電規模は契約するユーザーの需要の3倍あり、日中は再生可能エネルギーでほとんど全て対応できるそうです。ただ、夜間は風力発電のみとなるため、供給電力が不足した場合には市場から購入せざるを得ないことが課題になっているとのことです。
まず、島弁護士から発電事業者として直面している問題について質問がありました。
竹村さんは、電力会社の送配電網分離が不十分なため、新電力が容量不足を理由に接続を拒否されたり、送電網に接続するために多額の費用請求がなされるという事態が続いていることを挙げました。また、近年は、送電線などの送変電設備の空いている容量を活用するノンファーム型接続が広がってはいるが、平常時であっても出力抑制が行われるため、送配電網に関する問題の根本的な解決にはなっていないと指摘していました。
さらに、天然ガスの高騰による電力価格高騰で、昨年度は140社以上の新電力事業が倒産、廃業、新規契約停止などに追い込まれ、安い電力市場価格を前提にした新電力のビジネスモデルに脆さがあること、2024年からスタートする容量市場は送電線への接続に優先権を持っている古い発電所が温存されて再生可能エネルギーの普及に逆行する制度面だけでなく、新エネルギーの小売電気事業者も拠出金を負担するため、消費者へ価格転嫁が起こると、大手電力との格差がますます広がる恐れがあるといった、近時の経済状況や新しい制度の問題についても言及されました。
島弁護士から、近年は森林伐採などの自然環境の破壊を伴う風力発電や太陽光発電などは地元の反対運動により事業ができなくなる事案も増えきており、再生可能エネルギーを増やそうとする場合の問題や反省が出てきているとの指摘がありました。竹村さんも2050年カーボンニュートラルの実現に向けて再生可能エネルギーの利用は不可欠だが、ソーラーシェアリングなどによる農地の利用や都市部の建物の屋根を利用した太陽光発電を活用すれば十分にポテンシャルはあるので、自然環境の破壊を伴う発電ではなく、市民と自然に調和した開発がなされるべきとの提言で第1部が終了しました。

 第2部では、再生可能エネルギーだけでなく、カーボンニュートラルに向けた新しいエネルギーの利活用にも議論が広がりました。
この点、近年注目されている水素について、竹村さんは、水素は使い方によって利用価値はあるが、政府が進める石炭火力で発生したCO2と水素を掛け合わせて作るメタン(Eメタン)は愚策であり、政府の脱炭素政策に疑問を呈していました(Eメタンの問題点については、ぜひ竹村さんのブログで)。
 参加者から潮力発電の将来性についての質問があり、竹村さんはご自身の瀬戸内海での視察を振り返り、例えば、瀬戸内海にある塩田跡を堰き止めて使えば新たな治水開発をしなくても潮力発電が可能ではないかと述べ、新しい事業化の可能性に言及していました。
 今後の再生可能エネルギーの役割について、竹村さんは地域にある資源を使って発電し地域で使用するエネルギーの地産地消が重要であるとし、例えば、離島での風力発電と太陽光発電の組合せによる再生可能エネルギー100%の電力供給の可能性だけでなく、長野県の上田電鉄の架線を地域の送電線として利用するマイクログリッド(地域送電網)構想のような地域活性化に利用する新たな視点も紹介されました。
参加者からは、地方ではエネルギーの地産地消が可能であっても、大都市では難しいのではないかとの質問が投げかけられました。竹村さんも都市部では不足する電力を外から持ってくる必要があるとしつつ、例えば、(近郊農業のように)東京なら茨城や栃木などから調達することで地産地消に近い形が取れる可能性を示唆していました。
 また、東京近郊での発電事業に関わろうとしている参加者からの質問に対し、竹村さんは東京の農地は生産緑地が多く、国交省管轄のためソーラーシェアリングの許可が出ないという縦割り行政の問題点を指摘し、地域ごとの難しさがあることは否定しませんでした。 
最後に、島弁護士から、寿命を迎える太陽光発電パネルのリサイクルについての質問がありました。竹村さんは、技術的には、材質的(ガラス、シリコン、アルミ、銀線、銅線)には90%以上リサイクルできるといわれており、新しい技術開発によって最終的にはクリアできるのではないかとの見通しを語っていました。
 新しい時代の再生可能エネルギーの役割について、竹村さんは、東日本大震災後に急速に普及したが、取り巻く環境はまだまだ問題が山積みの過渡期にあり、ここしばらくの動きが再生可能エネルギーの未来を左右することになるとまとめられました。
 ちなみに、GPPは余剰電力を電力市場に売却することで仕入れ値との逆ザヤが発生して今年はじめて黒字化できたそうですが、前年度は巨額の赤字に苦しんだと語る竹村さんの表情を見て、小売電気事業の難しさとともに再生可能エネルギーのさらなる可能性を感じざるを得ませんでした。