2022/09/14
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弁護士 菅野典浩
サロン・ハウリンも第7回を迎えました。本日のゲストは、自由民主党の衆議院議員の井出庸生さんです。
井出さんは、東京大学を卒業後、NHKに入社し、横浜、仙台などで事件記者として活躍しました。2009年にNHKを退社し、長野選挙区から参議院選挙に立候補しましたが、あえなく落選。その後、2012年の衆議院選挙にみんなの党から立候補し、見事当選。文部科学委員会、法務委員会に所属し、いじめ防止対策推進法作成、インターネット選挙解禁などにかかわりました。
その後、2021年の衆議院選挙では自由民主党から出馬して当選し、2022年8月の内閣改造によって文部科学副大臣に任命され、ご活躍されています。
今回のサロンでは「新しい時代への政権政党の役割」と題して、現在の政治課題などにも触れつつ、未来の日本像を含めて熱く語りあいました。
第1部は、井出さんの政治家としての歩みを含めて現在の議員活動などをお話しいただきました。
野党時代に、「みんなの党」時代に特定秘密保護法の採決に際して党の方針に造反して衆議院本会議採決に反対をしたときのこと、「希望の党」に移るときの葛藤、さらには民進党の代表選出馬の経緯など、裏話を交えてお話しいただきました。
その後、島弁護士から、自民党に移って外から見た自民党と中に入って見た自民党の違いとは?いう質問に対し、井出さんは、あくまでも個人的な印象という前提で、自民党は「国が」、「家族が」といった形、フレームを大事にする人が多くいると感じたということでした。
島弁護士から、過去の自民党と違い、政策についての議論が党内でもきちんとなされないまま国民に示されているのではないかという疑問が示されました。これに対し、井出さんは、今の自民党は党内で自由に議論はできるが、党がまとまることを重視するため、議論が分かれるような問題については冷却期間を置かれることもあるとの現実を隠さずに話してくれました。
さらに、特に安倍政権以降は、結果を出せば手続きは無視してもよいといった政治手法がとられていった結果、少数者の意見を聞くという民主主義の根幹が崩れ、ベースラインが崩れているのではないかとの指摘にも、井出さんは、結果も大事だが、きちんと議論するという姿勢が大事であるとして問題意識の共有を図っていました。
また、野党と与党を経験した立場から、野党は一致団結して進めるという点がぐらついているし、(自民党とは)組織力の違いが大きいので、与党との対立軸が示せないのではないかという野党の現状を厳しく指摘しています。
最後に、井出さんは、政治家としての今後の活動として、日本の治安の良さなどを広げることで世界の平和や安全に資する、プレゼンスを上げるような外交、安全保障をやってみたいという思いはあるが、今はそのような舞台にはいないので、まずは取り組んでいる課題を一つひとつこなしていって、国民、政治家、官僚の信頼関係を築くことが大事だと考えていると述べ、自分と日本の未来像について熱く語っていただきました。
第2部に入り、より聞きにくい話に切り込むような質問も出るなど、参加者とともに議論を繰り広げました。
まずは島弁護士から、ウクライナ侵攻を契機に、防衛予算が従来の2倍になることは国の在り方が変わることなのに、どうやって国を守るのかといった理念が十分に議論されないことの問題点、さらには核共有など、否定されるにしても極端な主張をすることで、今後の議論の出発点にしようという動きが自民党にあるのではないかという疑念が示されました。
さらに、憲法9条の改正について、井出さん個人の見解として、自衛隊の役割や限界についても議論すべきと考えているが、自民党内でも簡単な問題ではなく、憲法改正について喫緊の課題として議論されてもいないとの現状を話されていました。
また、参加者との質疑応答では、日本が食糧やエネルギーなどを海外に依存していることの問題点や、昨今の政府・自民党の対応について、与党は野党の発言を聞かないという姿勢が自民党議員のバックグラウンドにある、あるいは与党の限られた議論の中で政策決定がなされ、決定過程に野党や国民がまったく関われないという不満を感じているという厳しい意見が指摘されました。これに対し、井出さんは、食糧安保の問題は党内でも議論されていることや、議論の仕組みをもっとオープンにしていくことが必要だが、今できることとしては記録をきちんと残していくことではないかと答え、問題点の認識を深めていました。
さらに、文部科学副大臣としての教育行政への取り組みとして、参加者から奨学金問題で苦しむ人の問題や無償で進学をする制度への取り組みについての質問がなされました。井手さんも、研究者が海外に流出していることや基礎研究に予算が付かない現状を変えるべく、今ある制度をより使えるようにプッシュしていきたいとの意気込みを語ってくれました。
ほかにも、大学生の参加者からは、中学生、高校生でも憲法の問題を知らない現状を踏まえ、法教育の必要性があるのではないかという質問にも、井出さんは、ご自分が地元の学校に呼ばれたときの経験も踏まえ教育現場での柔軟な対応に期待することや、再審制度の問題点と法律の改正に向けた意気込みなども力強く答え、政治家としての責任感がにじむ発言がありました。
今回のサロンでは、政権政党の現役国会議員として答えにくい問題が多かったにもかかわらず、一つひとつの質問に丁寧に答える井出さんの姿勢は、政治家としての意識と覚悟を示しているように思えました。
島弁護士や参加者から手厳しくも温かいエールが送られ、課題が山積している日本の未来を少しでも良くするため、井出さんが、議員として、また文部科学副大臣として活躍されることを願ってやみません。