2019/07/18
5月19日(日)、日本環境法律家連盟(JELF)のメンバーで、福島県喜多方市山都(やまと)町にある本木・早稲谷地区を視察しました。
この地区に移住して有機農業を営み、「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」でも活動されている浅見彰弘さんに案内してもらいました。
田んぼに行くため、少し登ります。 登った先にある棚田。
ここで作られるお米は「上堰米」と呼ばれています。そのまま販売するほか、日本酒にも加工されています。
本木・早稲谷地区にある民家のうち3分の1は空き家になり、現在人が住んでいるのは30軒ほどです。後継者不足や高齢化により農家も減り、4~5軒だけになってしまったとのことでした。
ここの耕作の特徴は、江戸時代中期、今から270年前に造られた「本木上堰」という素掘りの用水路で田んぼに水を流していることです。全長6kmにもわたる水路は、山の中を流れています。水がとても綺麗で、ホタル、サンショウウオ、カニなどが生息しているとのことです。
これが水路。
水路の真上には木々が生い茂っており、冬には倒木や落ち葉によって水路が荒れてしまうため、春先に水路の掃除が必要になります。
しかし、農家の減少により、水路を管理できる人も減ってきていることから、地区外からボランティアを募って、農業体験とともに水路掃除を行い、水路を守っておられます。
浅見さんいわく、本木・早稲谷地区では移住者を受け入れる風土があるとのことでした。この風土があるからこそ、270年守り続けられた水路が、後継者の減った今でも守られているのだと感じました。
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続いて、会津電力株式会社へ。
「雄国ソーラーパーク再生可能エネルギー体験学習施設 雄国大學」にて、常務の折笠哲也さんからお話をうかがいました。
地域の資本と地域の資源を活用し、地域の自立を実現することを目指して設立された会津電力株式会社。
設立メンバーはみな、電力とは無関係の仕事をしており、ソーラーパネルの傾斜の角度、パネルの高さなど、手探り状態ながらも実験を重ねられました。そのような実験を重ねて、金融機関に事業性をアピールし、融資を得られるようになったそうです。
会津地域初のメガソーラー発電所である雄国太陽光発電所。
現在、県内の学校等の公共施設約80か所にパネルが設置されており、緊急時には各場所で電気が使えるようになっています。
会津電力では太陽光発電だけでなく、バイオマス熱事業も開始し、2018年3月からボイラーを稼働させています。2018年からワイナリー事業もはじめ、無肥料、無農薬のワインの製造をし、さらに、2019年4月には小水力発電を稼働しているそうです。
会津電力は、設立からどんどん新たな事業を進めておられ、目的に向かって意欲的に活動されていることを改めて知りました。他の地域でも参考にできるのではないかと思います。
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今回の視察は、震災後の福島を見る視察でした。
震災、原発事故の影響は未だにあるようですが、前向きに新たなことを行っている方々と接し、力をいただいた視察となりました。
(弁護士 片口浩子)