2017/03/03
福島第一原発の原子炉の欠陥は、今も多くの原発に変わらず存在するものと考えられるため、ここで簡単に説明しておきたいと思います。
福島の事故は、制御棒の挿入によって核分裂を止めることには成功しましたが、その後
地震・津波の発生
⇒ 電源喪失
⇒ メルトダウン
⇒ 水素爆発
⇒ 放射性物質の大量放出
という経緯を辿って、史上最悪の事故となりました。
つまり、止める ⇒ 冷やす ⇒ 閉じ込める のうち「止める」には成功したものの、続く「冷やす」と「閉じ込める」に失敗したのです。
原発は様々な安全装置を備えており、それらが機能していれば、地震・津波が発生しても電源を喪失せず、また電源を喪失してもメルトダウンには至らなかった可能性があったし、メルトダウンから水素爆発や放射性物質の大量放出へも至らずに済んだ可能性がありました。
国や東電は、津波によって非常用発電機が水没したことがすべての原因であるかのように喧伝していますが、それはまったく違います。
それぞれの段階で、次の段階へ進まないような安全装置が用意されていました。
しかし、それらがことごとく機能しなかったために、負の連鎖が止まず、最悪の結果を招いたのです。
予定されていた安全装置が機能しないということは、それ自体、重大な欠陥ということができます。
なぜ、あれほど安全性を要求され、最高の技術を投入されたはずの原発にそれほど安易な欠陥が数多く存在するのでしょうか?
そこには共通の原因があります。
原発事故が発生した場合、「止める」ことには成功しても、原子炉ないし格納容器の中は必然的に高温高圧となります。
原発の安全装置は、高温高圧という状況下にあることで、それぞれの機能を失っていったのです。
つまり、通常の状態において安全機能の検証はされたのでしょうが、事故発生時における実験については行うことができず、約40年前の稼動開始以来、一度も使われることなく今に至り、高温高圧の中では機能しないことが初めて明らかになったのです。
例えば、水位計は原子炉内の正確な水位を示すことができず、電気がなくても使えるはずの冷却装置は機能せず、原子炉への注水系も使用不能となりました。
放射性物質を1000分の1まで減らして外部へベントできるはずのサプレッションチェンバーも、まったく機能せず、放射性物質を大量にばら撒きました。
高温高圧の状況で機能しなければならないことを想定していなかったというのだから、あまりにお粗末で、致命的な欠陥というしかありません。
さらに、高温状態では水素が発生することは分かっていましたが、高温下では格納容器のシール材が劣化し、そこから水素が漏れて建屋に溜まるということも想定していなかったために、水素爆発が発生したのです。
福島第一原発と川内原発の構造は、もちろん大きく異なる部分はあります。
しかし、高温高圧の状況下で安全装置が機能するかどうかという点について、改善されているという話は聞いたことがありません。
この点は、川内に限らず、日本中の原発が同じなのです。
そして、川内原発は、連日の揺れの中で、小さく、少しずつ劣化が進んでいる可能性もあります。
この原発を「異常なし」といって動かし続けることが正常な判断だとはとても考えられないのです。
(弁護士 島 昭宏)